データセンターはシンガポールに グローバルなIT基盤を作る

BCP総点検の勘所 (第6回)

データセンターの設置場所として、シンガポールが注目されている。電力やネットワーク事情が良いうえに、自然災害リスクが低く、政府の支援策があることなどが理由だ。東南アジアの様々な事情を踏まえ、シンガポールにデータセンターを設置するメリットを解説する。

シンガポール拠点の使い方

 こうしたIT基盤の課題解決のために、シンガポールをクラウド化拠点とすることを推奨したい。一般的なクラウドのメリット(迅速性/弾力性の確保、IT投資コストの平準化の実現、IT運用/品質の向上)に加え、先に見たように、自然災害リスクの低さ、社会インフラの安定、ITガバナンスの徹底といったメリットが享受できる。シンガポールをクラウド拠点とするケースは、大きく三つある。

ケース1:世界各地の拠点に展開するITリソースを、シンガポールのデータセンターに集約し、各拠点からはネットワーク経由でITリソースを使う。

 世界規模で事業を展開する多国籍企業のデータセンター集約事例としてよく見られる形態である。データセンター同士の役割分担や、集約先として自社内設備と外部委託、クラウドのどれを選ぶかなどは、事業内容により判断は異なる。いずれの場合でも、ITリソースの集約を図ることで、バラバラであったシステム運用を集約・標準化することが目的だ。これにより、コスト削減の実現や、セキュリティ面などでガバナンスを利かせることができるようになる(図2)

図2●シンガポールにITリソースを集約
運用コストを削減したり、ITリソースの割り振りを迅速化したりすることが可能になる



 システムの集約方針としては、既存サーバーの移行はリプレースのタイミングで行い、新規システムは新環境を当初より活用するのが一般的だ。また、開発環境など一時的にしか使わないものや、季節変動要因が大きいものはクラウド環境を活用するなど、使い分けも考える必要がある。

ケース2:域内拠点に展開するITリソースをシンガポールのデータセンター、および拠点にそれぞれハイブリッド統合する。

 域内にサーバー環境が点在する場合、それぞれのサーバー環境がバラバラで標準化されておらず、構成・運用・設定・ルールも統一されていないことが多い。これを解決するために1カ所に統合しても、各拠点から統合先へのネットワーク接続性を十分に確保できないため、無理に統合するとかえって不都合が生じる。その場合、シンガポールに地域統括のクラウド拠点を設置しながら、ネットワーク接続性が良くない地域・拠点については、従来どおり各拠点にITリソースを残す。

 また、近隣地域でネットワーク接続性が確保できるデータセンターを用いてクラウド環境を構築し、シンガポールとデータの同期を定期的に図る方法もある(図3)。時間やコストの制約により、自社でクラウド環境の構築が難しい場合、事業者のクラウドサービスを活用することも視野に入れたい。

図3●ハイブリッド型集約のイメージ
各拠点にITリソースを残し、シンガポールのデータセンターとデータの同期を図る



ケース3:SaaS型サービスへの完全移行により、自社拠点での運用を極小化する。

 東南アジアに進出する企業の多くは、本社に比べると現地拠点の規模は小さく、IT関連のリソースを十分に準備できていない。それにもかかわらず、拠点内にメールサーバーやファイルサーバーを抱えている。IT専任要員が拠点にいないため、本社や地域統括拠点からのリモートサポートに頼ったり、外部委託したりしがちだ。

 その場合、迅速なサポートが得られず、機器の老朽化が進んだり、情報セキュリティ事故が多発したりして、ユーザーの満足度が低下しかねない。これは特にメール環境や、ファイルサーバー環境で見かけるケースだ。

 この状況を打開するために、マイクロソフトのオフィス365などのSaaS型メールサービスや、オンラインでのファイルサーバー環境を活用する事例が増えている。SaaSを活用することにより、クラウド提供者がシステムを所有・運用するように変わる。ユーザー側は、使いたい機能を取捨選択、サービスに対する利用料を支払うだけで済むようになる(図4)

図4●SaaS型サービスに移行するメリット
ユーザーは必要なサービスを選び、使った分だけ対価を支払えば済むようになる



 自前でリソースを所有する際に発生する資産コスト(CAPEX)や、管理する場合に必要だったITサポートの労力や機器管理に要するコストから解放され、本来業務により専念できるというメリットも大きい。

(初出:日経コンピュータ 2011年09月15日号)

Nomura Research Institute (Singapore)
Business Development, Consulting, IT infrastructure担当Vice President

堀地 聡太朗
2002年に野村総合研究所に入社。
事業継続計画(BCP)全般、東南アジアの統括拠点組織に関するコンサルティングをはじめ、
事業継続サイト/データセンターサイト、クラウドコンピューティングを含めたIT基盤環境事業推進が専門。
2010年4月よりNomura Research Institute (Singapore)に出向。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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