データセンターはシンガポールに グローバルなIT基盤を作る

BCP総点検の勘所 (第6回)

データセンターの設置場所として、シンガポールが注目されている。電力やネットワーク事情が良いうえに、自然災害リスクが低く、政府の支援策があることなどが理由だ。東南アジアの様々な事情を踏まえ、シンガポールにデータセンターを設置するメリットを解説する。

自然災害リスクが低い

 シンガポールは、東南アジア周辺諸国および世界諸国と比べても、自然災害のリスクが非常に低い。地震に関してはユーラシアプレートの上にあり、過去に直下型地震が起きた記録はない。主要地震発生域からも台風のルートからも離れており、津波被害も確認されていない。このことは、電気・通信・交通インフラの断絶、建物の損傷など、データセンターの運用中断リスクを考える上で重要な評価要素だ。

 IT基盤の設置拠点としては、香港がよく引き合いに出される。香港と比べても、シンガポールのデータセンターのスペック、ネットワーク接続性は遜色ない。それぞれの地理的・設置経緯などの特徴に留意した上でどちらかを選択するケースが見られる。香港は中国への地理的・人的アクセスの良さという地の利を生かし、中華圏向けのIT基盤設置拠点として発展するだろう。一方のシンガポールは、東南アジア諸国への地理的・人的アクセスの良さ、そしてその安定した政治・法制度を生かし、東南アジア地域・アジア太平洋・オセアニア地域におけるクラウド拠点として、ますます注目が集まるだろう。

 日系企業の生産拠点が多く集まるタイをはじめ、今後進出が加速するベトナムやインドネシア、インドにおいては、電力・ネットワーク接続性などインフラ面で不安がある。政治・法の面からも不安定な要素は散見される。これらの地域についてはクラウド拠点というよりも、ローカルニーズに見合った必要最低限のITリソースを設置し、別途シンガポールなどに用意したクラウド拠点と連携させる、ハイブリッド型での活用を推奨したい。

東南アジアにおけるIT基盤の課題

 東南アジアにIT基盤を構築するに当たっては、様々な不安がつきまとう。東南アジア地域に進出する日系企業が挙げる、IT基盤の課題を見ていこう。

 一つめは、新興国内の拠点までのネットワーク接続性が弱いことである。インドネシアやベトナムといった新興国では、首都や主要都市内なら問題ないが、郊外や地方の生産拠点との接続を確保するのは容易ではない。コストも高く付くケースが多い。結局ADSLやダイヤルアップ、携帯3Gパケット網サービスなどのサービスに頼らざるを得なくなり、大容量のデータ通信は難しい。

 二つめは、東南アジアと一口に言っても、国・地方により言語・文化・法制度・ITセキュリティに対する意識に差があることだ。そのため、ITシステムの開発・運用の標準化を、ITシステム要員に浸透させるのは容易ではない。対策としては、本社や地域統括拠点で定めるIT戦略を現地に浸透させるか、逆に現地のITニーズを地域統括拠点や本社にエスカレーションさせる方法がある。後者を実現するには、現地事情に明るい現地採用社員の幹部への登用が有効だが、役割を担える人材の確保はそう簡単ではない。

 三つめの課題は、そもそも東南アジア地域の拠点のためのIT予算を十分に確保できないことだ。そのために、新規のIT施策や、老朽化したITシステムのリプレースなどが困難なケースもある。

Nomura Research Institute (Singapore)
Business Development, Consulting, IT infrastructure担当Vice President

堀地 聡太朗
2002年に野村総合研究所に入社。
事業継続計画(BCP)全般、東南アジアの統括拠点組織に関するコンサルティングをはじめ、
事業継続サイト/データセンターサイト、クラウドコンピューティングを含めたIT基盤環境事業推進が専門。
2010年4月よりNomura Research Institute (Singapore)に出向。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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