災害シナリオベースに限界 市場BCPで実効性を高める

BCP総点検の勘所 (第5回)

BCPを策定していたのに、東日本大震災で十分機能しなかった例は少なくない。BCP発動のルールや手順が整備されていなかったこと、BCPの想定シナリオが応用できなかったことが要因だ。災害シナリオからエマージェンシーレベルにアプローチを変えることで、BCPの応用力を高めることができる。

会社の枠を越えた「市場BCP」

 BCPの実効性を高めるには訓練が有効だ。訓練は、社内だけでなく重要な関係先を交えて行い、相手の業務継続計画との整合性や相互依存関係を確認すべきである。さらに、競合会社まで広げた業界横断的なBCPは「市場BCP」と呼ばれる。米国や英国では、複数の組織を巻き込んだ「ストリートワイド訓練」と呼ばれるものも頻繁に実施されている。業界横断的な訓練を通して、競合相手同士が被災時には相互支援できるようにBCPを高度化させた事例も多い。

 日本の金融業界において、市場BCPは海外に後れを取っていた。「いったん大災害が発生したら個別の金融機関ではどうしようもないので、市場BCPは金融当局と金融インフラに頼る」といった考えもあった。しかし、金融当局の積極的な関与や市場インフラの整備により、日本でも2005年頃から市場BCPが浸透し始めた。

 2010年11月の日本銀行の調査「業務継続体制の整備状況に関するアンケート」を見ても、市場BCPへのニーズは高まっている(図4)

図4●今後実施すべき訓練
業界横断的な「市場BCP」へのニーズが高まってきた



 金融業界の市場BCPには、決済という会社の枠を越えた機能を提供しているという業界事情もある。そのため、すべての業界で金融業界と同様の市場BCPを要求することは難しい。

 しかし、サプライチェーンを構成する会社が共同でBCP訓練を行い、相手のコミュニケーション方法やBCPを再確認することは重要だ。そのなかで、互いの事業継続上の問題点や課題などを改善していくことが、BCPの実効性を高めることにつながる。

(初出:日経コンピュータ 2011年09月01日号)

野村総合研究所 金融ITイノベーション事業本部
ERMプロジェクト部 主任コンサルタント

森 哲也
主に、金融機関を対象とした事業継続計画の策定および
ITガバナンスの構築、システムリスク評価、システム監査を担当。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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