データセンター戦略を練り直す 論点は機能、立地、設備、保有

BCP総点検の勘所 (第4回)

東日本大震災を受けて、データセンターの立地や設備の見直しが急務となっている。震災後の計画停電や節電要請により、データセンターの稼働状況が企業の事業継続に直接的な影響を与えているからだ。機能、立地、設備、保有という四つの論点で、自社に最適なデータセンターを明らかにしよう。

短期、中期、長期に分けて検討

 最後の論点は、センターを自社で保有すべきか否かである。

 判断基準は、自社のコア事業とデータセンター事業の関連性が深いか、設備陳腐化リスクを許容できるかどうかにかかっている。

 通信事業や電力事業、SI事業や倉庫事業などは、データセンター事業に事業内容が近い。データセンターの運営ノウハウを獲得することは、コア周辺事業の拡大につながるので、データセンターの保有に意義がある。

 一方で、設備陳腐化リスクが高まっているため、自社保有から外部利用に切り替える例も多い。また、データセンター構築・利用にはリードタイムが必要であり、データセンター着工からサービス開始までに1年半程度かかるのが一般的だ。スピードを重視するなら外部利用の方が得策である。

 近年、クラウドコンピューティングの導入拡大に伴い、システムを自社所有から外部サービス利用に移行する流れが加速している。ベンダーが提供するクラウドサービスに移行すれば、システムが物理的に設置されているデータセンターの所在を意識する必要がなくなるので、災害対策として有効である。ただし、データセンター被災時のクラウドサービスの縮退状況について、契約条件を確認しておきたい。

 また、クラウドサービスを利用しなくても、システムを仮想サーバー上に構築し、災害時にはベンダーの提供するクラウドサービスに即座に移行するなど、今までになかった手法も考えられる。今後は、仮想化技術をうまく利用してシステムの論理的な可搬性を高めていくことが重要である。

 データセンター戦略検討に必要な論点について整理したが、自社の事業環境やシステム環境によって、最適なデータセンター構成は異なるので、画一的にあるべき姿を提示できないのが実情だ。

 震災の影響による計画停電や、ベンダーのクラウドサービス拡大により、データセンター市場では需給ギャップが生じている。事を急いだ結果、割高なサービスを採用してしまうようなことは避けたい。そのためには、短期的(今夏を乗り切る)、中期的(来年の夏に備える)、長期的(恒久的な災害対策強化)というように実施時期を分けて災害対策を検討すべきだ。

 今夏の電力使用制限令や原子力発電所の再稼働の先行き、今秋に予定されている中央防災会議の災害シナリオの考え方の見直し、監督官庁や関連ガイドラインの動向などを踏まえて、冷静に判断することが重要である。

(初出 日経コンピュータ2011年08月18日号)

野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部
ITアーキテクチャーコンサルティング部 上級システムコンサルタント

海老原 弘
主に、システム化構想、データセンター構想およびシステム移行計画策定などの
ユーザー企業の企画力強化に関するシステムコンサルティングを担当。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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