データセンター戦略を練り直す 論点は機能、立地、設備、保有

BCP総点検の勘所 (第4回)

東日本大震災を受けて、データセンターの立地や設備の見直しが急務となっている。震災後の計画停電や節電要請により、データセンターの稼働状況が企業の事業継続に直接的な影響を与えているからだ。機能、立地、設備、保有という四つの論点で、自社に最適なデータセンターを明らかにしよう。

主・副センターで広域災害に備える

 二つめの論点は立地であり、主・副センターの立地をどうすべきかを検討する(図2)

図2●データセンンターの立地と設備レベルのパターン
広域災害を想定し、主・副のデータセンターの配置を考える


 これまでの災害対策は、中央防災会議の首都直下型地震の災害シナリオに基づき、複数データセンターの配置構成やデータセンターが備えるべき設備レベルについて議論されてきた。

 前述のFISCの安全対策基準では、かつては「データセンター間の距離は60km以上離して設置すべき」と明確に規定されていた。しかし、当時の地震災害モデルが局所災害を想定していたことに加え、システム運用性が極端に下がるとして、撤廃された経緯がある。今後は、広域災害への備えを想定する方向で基準が改訂されるだろう。

 立地選定においては、立地候補を決めて過去の地震・津波の発生状況、地盤状況、ハザードマップ、危険物取り扱い施設の有無などを参考にして、個別に立地環境を評価・選定する。日本にデータセンターを設置する限り、地震をはじめとする自然災害リスクは非常に高く、災害シナリオは自然災害が中心となる。相対的にリスクの低い、海外も選択肢に加えたい。

 広域災害への備えとして、センターの立地が離れているほどリスクは小さくなる。ただし、自社システム運用の成熟度や技術的な制約も考慮する必要がある。仮想化技術やネットワーク技術の成熟化でこうした制約は少なくなってきているものの、システム配置には十分注意したい。

エネルギー効率にも注目

 三つめの論点は、センターの設備レベルをどの程度にすべきかだ。

 データセンターの設備に求められる要件は、災害対策で重視される要件、およびサーバーなどの機器を高集積化するための要件の二つに大別できる。

 前者は、データセンターの信頼性を高めるための電源設備や回線設備の冗長化が代表例だ。変電所や通信事業者からのケーブルを、複数の系統から引き込んでおくことも大切である。後者の要件では、ラック当たりの電源能力や空調能力、耐荷重、天井高・床下高、拡張性などがポイントだ。

 また、環境に配慮する形で外気を利用した空調の導入や直流電源の活用など、エネルギー効率を高める施策にも注目が集まっている。社会環境の変化や技術革新に対応するためにデータセンターに求められる設備要求が高度化・多様化してきた(図3)

図3●データセンターの設備要求レベルの推移
社会環境の変化や製品・技術に応じて、設備要求が高度化してきた


 設備レベルの決定にあたっては、データセンターに関連するガイドラインと自社システムのサービス復旧時間を考慮すべきである。

 データセンターに関連するガイドラインとしては、米国の民間団体「Uptime Institute」が作成した設備基準(Tier)が業界標準となっている。日本の事情に即した日本版の基準が「日本データセンター協会(JDCC)」から公開されているので参考にしたい(図4)

図4●データセンターのサービスレベルの例
日本データセンター協会(JDCC)が昨年公開した設備基準



 日本版の基準は、世界最高レベルの商用電力事情や、日本製の無停電電源装置(UPS)の品質が高いことを背景に、日本の実情を反映したものになっている。今般の震災の影響で見直しが予定されており、改訂動向に注目していく必要がある。

野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部
ITアーキテクチャーコンサルティング部 上級システムコンサルタント

海老原 弘
主に、システム化構想、データセンター構想およびシステム移行計画策定などの
ユーザー企業の企画力強化に関するシステムコンサルティングを担当。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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