データセンター戦略を練り直す 論点は機能、立地、設備、保有

BCP総点検の勘所 (第4回)

東日本大震災を受けて、データセンターの立地や設備の見直しが急務となっている。震災後の計画停電や節電要請により、データセンターの稼働状況が企業の事業継続に直接的な影響を与えているからだ。機能、立地、設備、保有という四つの論点で、自社に最適なデータセンターを明らかにしよう。

 今回は、BCPを踏まえたデータセンター戦略を解説する。

 東日本大震災により、従来のBCPに見直しが迫られている。今回の震災は、これまでの自然災害の想定シナリオをはるかに超えた巨大な地震・津波だった。内閣府の中央防災会議では、近い将来発生しそうな切迫性の高い地震や津波を想定し災害モデルを設定していたが、災害モデル設定の考え方の抜本的見直しが必要となっている。

 また、地震・津波の副次的な影響として電力供給不足による計画停電への対応に迫られている。今後は、地震や津波、パンデミックに加えて社会インフラの停止への対応といったシナリオも組み入れる必要があるだろう。

 データセンターのステークホルダーは、利用者やサービス提供者、通信事業者や電力事業者、ビル管理会社などだ。各々が災害対策の重要性を再認識し、前述の変化を踏まえてデータセンター構成を再考する必要がある。

データセンター戦略の四つの論点

 データセンターの戦略を考える上で、主な論点は四つある。機能、立地、設備、保有という論点から、自社に最適なデータセンター構成を検討すべきである(図1)。すでにハウジングやアウトソーシングサービスの提供を受けている利用者は、このうち機能と立地と設備の三つを検討すればよい。

図1●データセンター戦略の主要な論点
自社に最適なデータセンターの構成を、四つのポイントから検討する



 最初の論点は機能だ。複数のデータセンターを設けるか否かがポイントになる。

 広域災害への対策を考慮すると、単一のデータセンターではリスクが高いので十分とは言えない。システム停止を回避するために、バックアップセンターを設けリスク分散を図ることが有効だ。データセンターを複数設け、主・副のデータセンター構成とすることは必須要件になりつつある。

 金融機関のセキュリティ対策や安全対策のよりどころである「金融情報システムセンター(FISC)」の安全対策基準では、「リスクの分散の意味で別の地域にバックアップサイトを設置することが望ましい」という自主基準を示している。これに沿う形で、多くの金融機関がバックアップセンターを設けている。

 金融機関以外の業種では、自社資産の有効活用を重視し、本社ビル敷地内もしくは本社ビル近隣のオフィスビル設備を増強して単一のデータセンターとしているケースが多い。

 今後は、バックアップセンターの必要性の高まりと共に、バックアップセンターが装備すべき機能レベルが重要な論点となるであろう。バックアップセンターの機能は、業務やシステムの重要度、システムごとの許容停止時間を整理し、バックアップセンターに設置するシステムのカバー範囲と費用対効果のバランスを勘案し決定することになる。

野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部
ITアーキテクチャーコンサルティング部 上級システムコンサルタント

海老原 弘
主に、システム化構想、データセンター構想およびシステム移行計画策定などの
ユーザー企業の企画力強化に関するシステムコンサルティングを担当。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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