マネジメントの仕組みを確立 サービス化の要求に応える

クラウド時代の「運用の常識」(第3回)

運用組織をどうマネジメントすべきか。「クラウド」や「仮想化」が普及期を迎えつつある今、新たなシステム形態やサービス化への対応がポイントだ。QMS(品質マネジメントシステム)やITSMS(ITサービス・マネジメント・システム)などを活用することで、運用改善とともに、組織の活性化が可能になる。

新しいシステム運用を探る

 サービス化を求める利用者の声に運用現場はどう応えるのか。筆者は、サ ービスマネジメントの枠組みであるITSMSを利用するのが有効ではないかと考えている。

 ITSMSは、開発現場のような短期決戦型のマネジメントが得意とする組織よりも、運用現場のように長期的な継続活動を前提としている組織のほうが親和性が高い。ITSMSに定義されている「継続的業務改善プロセス」などの仕組みは、運用現場への適用が容易である。

 ここで、野村総合研究所がITSMSのマネジメントシステムを取り入れた事例を基に、導入効果を見てみよう。

 弊社では、クラウドや仮想化の進展により、システム運用部門の仕事が「情報システムの維持管理から、情報サービスやサービス提供者をマネジメントするという業務に大きく変化するのではないか」という仮説を立て、2008年よりITSMSのマネジメントシステムを利用した、運用現場の業務改善に取り組んできた。

ITSMSでモチベーションも向上

 ITSMSによる運用現場の改善活動で得られた最大の成果は、「今の水準を維持すればよい」という現場の意識が変わり、「サービス向上」や「顧客第一」ということを真剣に議論し始めたことにある。

 従来の開発者相手のビジネスでは、「黙っていても運用の仕事はある」という意識がどうしてもあった。しかし、自らサービスを提供することで目を外に向けることができ、要員のスキルアップやモチベーション向上が図れた。

 また、サービスとして従来は部門ごとに管理されていた契約類をサービス・レベル・アグリーメント(SLA)として整備できたことも、運用業務の水準を網羅的に管理することを可能にし、結果的にサービス化への対応を加速させることにつながった。

 QMSによるマネジメントが現場主導のボトムアップである仕組みに対して、ITSMSの活動は経営者主導のトップダウンの仕組みである。弊社でも、QMSによる改善活動では、運用現場の組織改革まではたどり着けなかった。これに対してITSMSは、トップが組織マネジメントを行うためのツールでもあるので、組織改革にも効果を発揮した。

 一例として、ITSMSのプロセスを適用したことで、運用現場の組織の透明性が高まったことが挙げられる。各事業部門の活動が有効に機能しているか、十分な水準を保っているか、問題に対して有効に機能を発揮できているかなど、運用現場の活動の実態は以前より透明性を増した。これにより、組織全体のマネジメント水準が向上したことに加えて、事業部門で働く要員について、誰がどのように頑張っているのかが、容易に分かるようになった。もう一つ、水平連携が強化されるという効果もあった。従来は案件単位にプロジェクトチームを作るという形の、部門間連携にとどまっていた。ITSMSのプロセスを適用することで、事業部門同士の水平連携にまで発展した。垂直統合の事業部制の縦軸に対して、ITSMSは水平統合の役割を担うことになる。従来の縦割の組織からマトリックス型の組織に変わることで、組織全体の活性化をもたらし、サービス提供体制が強化できた。

 サービス化を求める利用者の声をもはや無視することはできないというのが、運用現場で働く筆者の実感だ。クラウドや仮想化を求める声が、情報システムの利用形態のパラダイムシフトを起こす可能性は高い。こうした変化を受け止め、運用現場も変化を模索していかなければならない。

(初出 日経コンピュータ2011年01月20日号)

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用マネジメント部 主任システムエンジニア

五十嵐 智生
2008年より野村総合研究所データセンター部門の組織改革プロジェクトに携わり、
ITSMSによる制度設計などを推進。専門はマネジメントシステムの設計、
構築、維持管理、運用コンサルテーション。NRI認定ITシステムマネージャー。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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株式会社 野村総合研究所
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