マネジメントの仕組みを確立 サービス化の要求に応える

クラウド時代の「運用の常識」(第3回)

運用組織をどうマネジメントすべきか。「クラウド」や「仮想化」が普及期を迎えつつある今、新たなシステム形態やサービス化への対応がポイントだ。QMS(品質マネジメントシステム)やITSMS(ITサービス・マネジメント・システム)などを活用することで、運用改善とともに、組織の活性化が可能になる。

サービスの中身が変化

 ここ数年、話題の中心にある「クラウド」や「仮想化」だが、いよいよ本格的な普及期を迎えつつある。運用の現場では、こうした新たなシステム提供形態や、仮想化環境の新技術について、どのように運用していくかが鍵であると言われている。

 運用の現場は、ホストコンピュータからワークステーションを経て、PCサーバーによるオープンシステム中心の運用まで、これまで様々なシステム環境の変化に対応してきた。そんな変化を乗り越えてきたメンバーも、クラウドや仮想化への対応には戸惑いを隠せない。

 なぜだろうか。これまでに経験した変化は、コンピュータのダウンサイジングやシステムのモジュール化が中心だった。これらに対して、クラウドで求められているのはサービス化であり、仮想化で求められているのは従来の視点とは全く異なる新たな運用管理手法であるからだ。

 サービス化への対応は大きなテーマの一つである。従来、SIとして提供してきたシステム開発や運用・保守でいうところのサービスは、クラウドで求められているサービス化とは全く異なる。従来は、利用者のニーズに合わせて情報システムを個別に組み上げるためのサービスだ。

 これに対してクラウドで想定しているサービスは、サービスプロバイダーが利用者に対して提供するものだ。「情報サービス」を提供しているといっても、両者ではサービス提供の仕組みが違う。これは、注文服が一般的だった昔の洋服店から、既製服中心に販売している現在の衣料品店への変遷に似ている(図1)

図1●従来のSIサービスとクラウドサービスの違い


QMSは予防が不得手

 クラウド時代を迎えた今、運用現場が抱える課題は三つにまとめられる。(1)品質管理、(2)開発/運用の時間軸の違い、(3)サービス化への対応、である。(1)(2)は従来の課題の延長だ。一つめは、システム開発や運用・保守の品質管理。ここでは、QMS(品質マネジメントシステム)など現場主導のマネジメントシステムを利用して、利用者へ提供するサービス品質を上げるための努力がされてきた。

 QMSは、1987年に国際標準機構から発行された国際規格の一つでISO9000の形で品質マネジメントシステムとして取りまとめられた。その後、1994年と2000年の改定を経て現在に至っている。

 1994年までのQMSは、「品質保証システム」として品質を保証するための手順を確立するという点に軸足を置いていた。そのため、書類の作成に終始し現場の作業効率が落ちてしまいがちだった。2000年の改定では、「顧客満足を達成するための管理体制」に軸足を置いたことで、現場のボトムアップの取り組みとして、産業界に広く普及し、品質管理を通じて顧客満足を達成するための仕組みとして知られるようになった。

 運用現場の観点でみると、QMSは現場主導の仕組みであるため、ボトムアップ活動として現場の理解が得られやすいという強みがある。その半面、障害やトラブルをトリガーに改善プロセスを回すサイクルであるため、予防的な品質管理は不得手だという弱点を持つ(図2)。マネジメントシステムの構築に当たっては、こうした強みと弱みを持つQMSの仕組みを理解しておく必要がある。

図2●QMSの問題点
改善サイクルは機能するが、インシデントをトリガーとして回るプロセスなので、
予防的な改善活動は苦手で後手に回る傾向がある

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用マネジメント部 主任システムエンジニア

五十嵐 智生
2008年より野村総合研究所データセンター部門の組織改革プロジェクトに携わり、
ITSMSによる制度設計などを推進。専門はマネジメントシステムの設計、
構築、維持管理、運用コンサルテーション。NRI認定ITシステムマネージャー。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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