マネジメントの仕組みを確立 サービス化の要求に応える

クラウド時代の「運用の常識」(第3回)

運用組織をどうマネジメントすべきか。「クラウド」や「仮想化」が普及期を迎えつつある今、新たなシステム形態やサービス化への対応がポイントだ。QMS(品質マネジメントシステム)やITSMS(ITサービス・マネジメント・システム)などを活用することで、運用改善とともに、組織の活性化が可能になる。

 システム運用の現場であるデータセンターでは、そこで働くエンジニアやオペレーター、建物設備管理者など、様々な職種やスキルレベルの要員をマネジメントをしなければならない。今回は、「運用組織をどうマネジメントすべきか」を考える。

ITILとITSMSが双璧

 ビジネスのみならず、社会インフラとしても情報システムの重要性が増し、ITサービスの品質と安定提供が強く求められている。そこで、システム運用で業務をどうマネジメントするかに関心が集まってきた。代表的なマネジメント手法が、ITIL(ITインフラストラクチャーライブラリー)とITSMS(ITサービス・マネジメント・システム)だ。

 ITILは、1989年に英国政府のITサービスの利用と提供に関するベストプラクティスを取りまとめたマネジメントの手法だ。元々は英国政府のITアウトソーシングの調達における活用を意識してまとめられたもので、今では世界中のシステム運用分野で活用されている。版を重ね、2007年に発行されたVer.3が最新版となっている。

 一方のITSMSは、2005年に国際標準機構(ISO)から発行された国際規格の一つであり、ISO20000としてまとめられている。ITILを基にした英国規格BS15000から発展して国際標準化された(表)

表●ITILとITSMSの成り立ち



 マネジメントを実現するために、プロセス単位で必要な組織を横断的に管理し、その単位で役割と責任を明確にする点は、ITILとITSMSで共通だ。

 ITILとITSMSではどちらが優れているのか。こうした議論がなされることがあるが、ここではあえて触れない。大切なことは、マネジメントによって、ITサービスの品質と安定的な提供を実現することだ。ITILやITSMSなど、手法はどれでもかまわない。

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用マネジメント部 主任システムエンジニア

五十嵐 智生
2008年より野村総合研究所データセンター部門の組織改革プロジェクトに携わり、
ITSMSによる制度設計などを推進。専門はマネジメントシステムの設計、
構築、維持管理、運用コンサルテーション。NRI認定ITシステムマネージャー。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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