地震対応計画を見直し 東日本大震災で検証

BCP総点検の勘所 (第3回)

野村総合研究所では2010年秋に「地震対応計画」の見直しを行った。災害時の交通規制などを踏まえ、より実効性のある計画へ改善することが目的だった。今回の大震災と計画を照らし合わせると、想定内だったことがある半面、想定外だったことも数多い。計画の改善を継続することが大切だ。

電力不足は想定できず

 想定外だったことは数多い。携帯電話会社の違いによる影響や携帯メールの遅延、地震の影響範囲、原発事故、電力会社の電力供給力不足などだ。

 災害時に携帯電話が通じにくくなるであろうことはある程度想定していた。ところが、災害に強いと思っていたNTTドコモが全く通じなくなってしまったことや、逆に加入者が少なく携帯電話と通信方式が異なっていたPHSのウィルコムは比較的影響が少なかったなど、計画策定時に想定できない事象が発生した。

 また、携帯メールも大幅に遅延が発生し業務に使うことができなかった。他社のデータセンターでは無線通信が有効だったという話も聞いている。古い技術でも確実なものを、手段として検討しなければならないという教訓だろう。

 地震の災害シナリオでは、首都直下型地震や広域の東海地震などを想定して計画を立てていたが、今回のように岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmの広範囲で震源域を観測するような超巨大地震は、全くの想定外だった。

 現在、国でも単独の大地震の発生のみならず、連鎖的に大地震が広範囲で発生する可能性について検討が始まってる。内閣府の中央防災会議などで発表されている地震の想定シナリオも大きく変わることが予想される。

 原子力発電所の事故も、想定していなかった。これまでの計画でも災害の発生に伴う停電に備えて、無停電電源装置や自家発電機などを配備しデータセンターの電力を確保する計画になっていた。しかし、電力会社の発電所そのものが災害で被災し、広範囲な電力不足が長期間にわたるという事業リスクは、誰も想定できなかっただろう。また、今夏に向けての節電対策などは、大容量の電力を必要とするデータセンター事業者にとって、難しい経営課題であり、従来の計画策定で求められてきた要求事項が根底から覆されている。

継続的な改善や見直しが必須

 東日本大震災を受けて多くの企業で事業継続計画の見直しが始まっている。運用現場で危機管理マネジメントを実践しなければならない人にとって、今ほど難しい局面はない。

 今回の震災を通じて明らかなことは、従来、この程度まで準備しておけば大丈夫とした事業継続計画や災害シナリオが、大災害を前にしてほとんど役に立たなかったという事実だ。何重にも安全策を施していた原子力発電所も、今回の震災で破壊されてしまった。震災後、従来の前提条件が通用しなくなったと感じるのは、筆者だけではないだろう。

 計画策定者として震災から導き出せる教訓は、正解がないながらも、事業継続計画は大変重要であるということだ。従来、多くの企業で、事業継続計画についてはそれを作るまでが関心のピークで、維持管理の段階になると継続的な改善や見直しがなかなか行われないできた。しかし、完璧でないから経営陣も社員も継続的に検討することが必要である。

 想定外は避けられないが、事業継続計画の定期的な見直しや、災害シナリオの追加、関係者による実地訓練の実施などによって、応用を利かすことができたという声は多く聞かれた。地道な活動が事業継続の明暗を分けたことは、震災を経験した多くの人が実感したはずだ。

(初出:日経コンピュータ 2011年08月04日号)

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用事業推進室 上級システムエンジニア

五十嵐 智生
2008年より野村総合研究所データセンター部門の
組織改革プロジェクトに携わり、ITSMSによる制度設計などを推進。
専門は、組織改革とマネジメントシステムの設計、構築、運営、運用コンサルテーション。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

お問い合わせ

株式会社 野村総合研究所
クラウドサービス本部
TEL:03-6706-0331
E-mail:sysm-info@nri.co.jp

ページのトップへ