地震対応計画を見直し 東日本大震災で検証

BCP総点検の勘所 (第3回)

野村総合研究所では2010年秋に「地震対応計画」の見直しを行った。災害時の交通規制などを踏まえ、より実効性のある計画へ改善することが目的だった。今回の大震災と計画を照らし合わせると、想定内だったことがある半面、想定外だったことも数多い。計画の改善を継続することが大切だ。

衛星電話が役立った

 ここからは、今回発生した震災と危機管理計画を照らし合わせ、想定内だったこと、想定外だったことを検証していこう。想定されたこととしては、鉄道の不通、特にJRの問題、そして衛星電話の活躍が挙げられる。

 危機管理計画の見直しで、一番難しい課題が、「鉄道の不通」だった。事業継続を行うには、要員を現地対策本部やBCPサイトへ移動させなくてはならない。移動手段の明確化は絶対条件だった。

 鉄道会社の災害時の計画を調べたり、東京都や横浜市などが作成している災害時の計画から、道路を使った交通手段は利用できないと判断した。道路に関しては、災害優先道路は自衛隊や警察、消防、自治体関係などが優先となる。また、自治体の災害計画で道路に関する様々な規制条件があり、事業継続計画に組み入れることは簡単ではない。

 残された手段は鉄道であるが、大地震などで線路や駅舎などに被害が発生した場合は、運行ができないことが想定される。JRでは、「大災害発生時は線路上に停止した列車に残された乗客の救援を優先するため、駅舎から乗客を出した上で駅舎を一定期間閉める」という計画であることが分かった。鉄道での移動も厳しいという結論になり、鉄道が利用できるケースに加えて、徒歩で移動するケースを新たに定義して要員を見直した。

 データセンターには、通信網がダウンした際に備えて、衛星電話を準備していた。

 携帯電話会社の災害時の計画を見ると、拠点への電源車の配備などでインフラを確保する、仮に音声通信ができなくなったとしても、パケット通信網であるメールに関してキャパシティーは十分といった説明があった。しかし万が一に備えて、衛星電話を用意した。当然、電話会社がかなり準備しているのに、コストのかかる衛星電話を果たして維持する必要があるのかという議論になった。

 ところが、多くの人がご存じの通り、今回の震災では携帯電話はもとよりメールも通信できない状況になった。私たちのセンターでも衛星電話が大いに役立った。安易にコスト優先で衛星電話を廃止していたら、大変なことになっていただろう(図4)

図4●衛星電話を活用
衛星電話については、不要論が出始めていたが、震災時には役立った

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用事業推進室 上級システムエンジニア

五十嵐 智生
2008年より野村総合研究所データセンター部門の
組織改革プロジェクトに携わり、ITSMSによる制度設計などを推進。
専門は、組織改革とマネジメントシステムの設計、構築、運営、運用コンサルテーション。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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