ITインフラとビジネスをつなぐ 運用管理ツールで課題解決

クラウド時代の 「運用の常識」(第2回)

運用管理を効率的に進めるために、ツールの活用が欠かせない。クラウドサービスや仮想化環境に向け、運用管理ツールは機能強化が図られてきた。今回は、運用部門が直面している課題を明らかにしたうえで、運用管理ツールを活用するためのポイントを解説する。

仮想化/非仮想化の環境を管理

 VMwareやHyper-V、Xenに代表されるサーバー仮想化技術により、物理サーバーの管理コスト削減や、リソースの有効活用が可能となった。ただし、仮想化したがゆえに、かえって運用・維持管理コストが上がってしまうこともある。仮想化環境に特有の運用管理上のポイントとして、以下が挙げられる。

(1)仮想化環境での物理障害対応
 ハードウエアの性能が向上してきたことで、物理サーバー上への仮想マシンの集約率が高まっている。それに伴い、物理サーバー障害時の影響範囲が大きくなっている。障害発生時の原因調査や影響範囲の特定に時間がかかるという問題もある。運用担当者は、物理環境と仮想化環境のマッピング情報や、ストレージ/ネットワークについて最新の構成情報を把握しておく必要がある。

(2)仮想化/非仮想化の混在
 業務特性により、仮想化したシステムと物理環境のまま継続利用するシステムが混在することがあり得る。このような仮想化/非仮想化の混在環境においては、運用手順を一元化して運用負荷を下げる工夫が求められる。例えば、監視画面の一元化や、サーバーハングアップ障害時のパワーオフ/オン作業手順の標準化、自動化が必要である。

(3)リソース使用状況の管理
 CPUやメモリー、ストレージやネットワークなどシステムリソースを有効活用できるのが仮想化環境のメリットだ。リソース稼働率を上げてこのメリットを最大限に引き出すには、仮想マシンと物理サーバー両方の視点からキャパシティ管理を行う必要がある。

 さらにクラウド環境では、仮想化環境のインフラ管理に加えて、ユーザー向けに「サービス提供」するための仕組みが必要である。ユーザーからの各種申請や要求を受け付けるポータル機能や、SLAや課金の管理、タイムリーな環境提供のためのセルフサービス・オートプロビジョニング機能、ライセンスや資産の管理といった機能だ。これらを実現するためには、管理ツールの活用を検討する必要がある(図2)

図2:仮想化環境での運用管理のポイント


コスト削減と品質改善を両立

 多くの企業が運用・維持管理コストの削減を目標に掲げ、その実現が求められている。しかし、一方で「開発1年、運用10年」と言われるように、運用フェーズでITシステムを長期安定稼働させる重要性が増している。そのため、誤った方向性のコスト削減策は、システム障害を誘発するなど企業の経営リスクにつながる可能性がある。運用管理の改善については、以下の三つのポイントで現場が自発的に効率化や負荷軽減策を検討すべきである。

(1)運用コストの見える化
 運用の現場でメンバーが忙しくなっている原因を、管理者は正確に把握できているだろうか。利用者との電話やメール対応に追われているメンバー、システム設定変更や手順書作成に時間を費やしているメンバーなど、現場では様々な業務が日々行われている。

 運用フェーズでは各業務の内容・作業量・進捗が管理者に見えづらい。このことがノウハウの属人化や現場メンバーの疲弊をまねいている。これらの課題を解決するには、サービス要求管理や変更管理のツールを活用し、業務内容の見える化を図ることが有効だ。

(2)システム障害の見える化
 複雑化するオープン系システム環境下で、トラブルをゼロにすることは難しい。一方でコスト削減のため、要員削減や老朽化対策の見送り、ベンダー保守解約などの調整を行わざるを得ないケースも見受けられる。

 このような状況下でシステムの安定稼働を支えるには、システム障害発生時のインパクトを最小化するための工夫や、ツールを用いた仕掛けが必要になる。インシデント管理ツールで見える化や分析を行い、同様トラブルの再発を防ぐためのナレッジ共有の仕組みや、ヒューマンエラーを防ぐための障害対応手順のイベント自動化を進める必要がある。

(3)安定運用のためのルール作り
 運用部門の業務が非効率となっている原因として、システムごとにバラバラの運用業務設計を行うことによる属人化が挙げられる。運用部門の役割分担や業務内容のルールの標準化が必要である。定義されたルールに従い、日々の業務プロセスを適切な承認フローを用いて行うためのITサービスマネジメントツールの活用が効果的だ。

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
千手事業部 部長

石井 信一郎
オープン系、Web系システムにおける運用管理ツールの設計・開発が専門。
運用管理ツール「Senju Family」の初期バージョンより設計・開発を担当。
NRI認定システムアナリスト、情報処理技術者(ITストラテジスト)。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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