IT-BCPを策定する 優先業務をRTO内に再開

BCP総点検の勘所 (第2回)

ITサービス継続管理の体系化を目的とした「ISO27031」では、ITサービスを対象としたBCPである「IT-BCP」について、ガイドラインが示されている。全社の事業継続マネジメントで特定した優先継続業務を、RTO(復旧目標時間)以内に再開することが目的だ。IT-BCPの取り組みを紹介する。

クラウド時代のディザスタリカバリ

 クラウド時代を迎え、災害を想定したシステムや施設のあり方も変わってきた。仮想化技術やストレージのデータ同期機能は、IT-BCPの実効性向上に極めて重要な役割を持つ。

(1)仮想化技術の導入

・RTOの劇的な短縮:仮想化技術は、多くの分野で本格的な活用段階に入っている。仮想化により、ハードとソフトの緊密な結合が解消され、サーバーが障害に陥っても、アプリを他のサーバーに割り当て直すことで、従来に比べ、短時間で復旧が可能になった。この技術を利用すれば、同時被災のリスクの少ない2カ所以上のデータセンターに機器を分散しておき、一つのデータセンターが機能を停止しても、他のデータセンターにある機器に優先継続業務に必要なアプリを割り当て、業務再開が図れる(図3)

図3:仮想化技術を利用したデータセンターのディザスタリカバリの例


・投資効果の向上:従来のバックアップ機器は、プライマリー側システムの障害に備え、ただ待機している役割であった。仮想化技術の導入により、図3のとおり、両データセンターのサーバーは、常時稼働可能となる。これにより、機器に投資した費用が、常に業務に貢献する状況になり、設備投資効果が劇的に向上する。また、アプリごとの冗長化構成が不要なので、サーバー数が削減でき、データセンターのスペースや電力消費、機器調達コストも削減可能となる。

(2)ストレージ機能によるデータ同期

 従来、データを冗長化する場合、アプリ側で、正副のストレージに書き込んでいたが、現在は、ストレージ装置でデータ同期機能を実現する方式が、主流を占めている。
 アプリでデータ同期を図る場合、アプリ変更の手間と修正ミス、正副のストレージ間の距離(光ファイバーで50km、物理的に20~30kmが限界)による処理遅延などの懸念があった。
 ストレージ同期により、処理能力への影響やアプリ改修の手間を、大幅に改善することが可能となった。仮想化技術を利用したディザスタリカバリの仕組みでは、複数のデータセンター間で、データの同期が取れていることが前提となるので、ストレージによるデータ同期技術、さらには、ネットワークの高速化と価格の低下が、極めて重要な要素であるといえる。

(初出:日経コンピュータ 2011年7月21日号)

野村総合研究所 金融ITイノベーション事業本部
チェンジマネジメント推進部

伊藤 繁
2003年よりBCP関連事業を担当。
事業継続計画の策定や業務環境の見直しに関するコンサルティング、金融機関向けデータセンター・
事業継続用バックアップ・オフィス提供事業、事業継続を目的とした事務のアウトソース事業に従事。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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