経営に資する運用

仮想化、クラウド時代の“運用の定石”第1回

クラウドコンピューティングが普及すると自社のシステム運用業務は不要になるのか? さにあらず。筆者は、むしろその存在がさらに重要になり運用部門こそが情報システム部門(以下“IT部門”)全体をサービス指向の組織へ変革するための先駆者になると考えている。初回はシステム運用業務をサービス化することの重要性を企業のIT部門の組織運営の観点から考察する。

8.導入効果

当社は、ITSMSを導入して今年で3年目を迎える。ようやく現場でのPDCAの活動が定着しその成果が徐々に表れてきたところである。一方で、他社の事例の中には途中で活動がうまく回らなくなってしまった例もいくつか聞く。

その理由は、次のようなことが考えられる。活動の目的が単にISO20Kの認定取得になってしまい、取得後は活動が低調になってしまったケース、現場からの抵抗や導入効果に疑問視する意見がでて推進体制がうまく機能しなくなってしまったケース、あるいはCIOから導入効果の理解が得られず途中で後ろ盾がなくなってしまったケースなどが挙げられる。

ここで、当社トップのコメントを紹介すると 「世間ではデータ漏えい事件や、オンライン障害事件など会社の信用を失うような重大事故が数多く発生しており、企業活動の最大のリスクは運用にあることを再認識しないといけない。ITSMSの導入によって、以前は問題が発生してから個別対処するというやり方であったが、今では社員自らが改善計画を作り、実行し、エビデンス残しこれをしっかり管理している。さらにその活動が内部監査、外部監査で裏打ちできているため、私は安心して本業に専念できる。」 このように、ITSMS導入の成否は、経営トップ、CIOがいかにその重要性を認識し推進することができるかに尽きるのである。

図4:PDCA方法論


9.まとめ

ITをサービスとして捉える動きは、今後もさらに加速し、そのための手段としてクラウドサービスを利用する企業は増えていくだろう。

今回はクラウドサービスを効果的に活用するために、「自社のITをサービスとして厳密に定義しこれを継続的に提供する組織運営の確立が必要」であることを述べた。 そしてその実現のために、以下の二点が重要であることを説明した。

次回は、クラウドサービスに必要な仮想化技術や製品の運用面における課題や解決策、これを支える管理ツールについて技術的な観点から論じる。

(初出:日経コンピュータ 2010年12月8日号)

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用事業推進室 室長

渡辺 浩之
データセンターにおけるシステム運用の自動化、効率化のためのシステム化および
運用業務プロセスの設計、開発を担当。ITIL V2 Manager、V3 Expert有資格
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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