経営に資する運用

仮想化、クラウド時代の“運用の定石”第1回

クラウドコンピューティングが普及すると自社のシステム運用業務は不要になるのか? さにあらず。筆者は、むしろその存在がさらに重要になり運用部門こそが情報システム部門(以下“IT部門”)全体をサービス指向の組織へ変革するための先駆者になると考えている。初回はシステム運用業務をサービス化することの重要性を企業のIT部門の組織運営の観点から考察する。

6.IT運用部門の組織改革

ITSMSの導入は、運用部門から適用することを勧める。ITSMSは、ITをサービスとして捉え、これを管理運用するためのフレームワークである。システム開発のようにプロジェクト型のマネジメントが得意とする分野に比べて、システム運用のように継続的な活動を前提とした組織の方がITSMSに向いているのである。

一方で、クラウドサービスを利用するということは、IT部門が自らこなしていた業務の一部を事業者側に委託することを意味する。 特に日々の運用業務はクラウド事業者側で行うため、システム運用部門の仕事は、単にITの維持管理を行う業務から、ITサービス全般をマネジメントする業務に変わっていくのである。

7.導入事例

では、ITSMSを導入することによって、仕事のやり方はどのように変わるのか? 当社のシステムマネジメント事業本部の事例をもとにその一端を紹介する。

サービスの定義

まずは、運用サービスに必要な運用業務マニュアルの作成を行った。業務マニュアルは、サービスの明文化を意味するが、目的、用途に応じて体系化、細分化する必要がある。

サービスカタログとSLA

サービスカタログは、顧客に提示するサービスメニューであり、顧客はこのサービスカタログから必要とするサービスコンポーネントを選択する。そしてSLAは選択されたサービスメニューを基にサービスの提供者と利用者の間で取り決められる。

サービスの提供

すべてのIT運用業務は顧客と取り決めたSLAに基づいて実施される。そのためにどれだけのリソース(人、物、金)を必要とするかは、顧客にとっては関与しない(できない)事柄である。

モニタリングとレポート

SLAには、サービス毎にその提供状況を客観的に把握できる指標(Key Performance Indicators)とその達成目標値を設定する。そして、その結果を定期的に提供者と利用者の双方で共有して目標値が順守されているかどうかを評価する。
ここで重要なのは、KPIは必ず計測可能な項目であるということである。 計測する手段をもたないKPIはその結果を報告することもできないし評価もできないからである。

継続的な改善

達成度を双方で評価することによって、今後のサービスのどこを改善することが必要なのか?その優先度と緊急性を双方合意の上で改善計画を立て、実施することができる。サービスの改善活動と改善後の新しいサービスの提供、モニタリング・報告を繰り返すことによって、より一層、利用者のニーズに応えた満足度の高いサービスにすることができる。

図3:サービスカタログとSLAに基づくサービスの提供


野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用事業推進室 室長

渡辺 浩之
データセンターにおけるシステム運用の自動化、効率化のためのシステム化および
運用業務プロセスの設計、開発を担当。ITIL V2 Manager、V3 Expert有資格
(著者プロフィールは執筆時のものです)

お問い合わせ

株式会社 野村総合研究所
クラウドサービス本部
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