経営に資する運用

仮想化、クラウド時代の“運用の定石”第1回

クラウドコンピューティングが普及すると自社のシステム運用業務は不要になるのか? さにあらず。筆者は、むしろその存在がさらに重要になり運用部門こそが情報システム部門(以下“IT部門”)全体をサービス指向の組織へ変革するための先駆者になると考えている。初回はシステム運用業務をサービス化することの重要性を企業のIT部門の組織運営の観点から考察する。

4.ITサービスの定義

そのためには、まず自社のすべてのITが利用者の視点でサービスとしてきちんと定義されていることが重要である。 ITがサービスとして定義されず、十分に整理されていないまま、外部のサービスを利用しようとすると、それが企業活動の目的と合致しているのか、事業活動の要件を十分に満たしているのかということを正しく評価することができない。また、サービスの評価をする場合、以下のような契約条件についても検討が必要である。

(ITサービス契約時の検討事項)

・基本事項
・サービス内容、サービス時間、スペック・規模、料金
・詳細事項
・情報漏洩、改竄、破壊に対する事故責任の保障条件
・サービスの継続性(企業倒産や法制度の変更、災害対策)
・可用性レベル
・パフォーマンスの限界・保障
・サービス改善や報告の充足度
・サポートデスクの提供
・権利関係(IT資産、データ、通信ドキュメント)
・契約条件の変更
・etc

これらの検討をおろそかにすると契約条件によっては企業活動に致命的なリスクをもたらす。以上のべた様に、要件が明確でなければ、他社のサービスの活用もできないはずである。しかし実際には、自社のITサービスを厳密に定義して事業部門の利用者に提供しているIT部門は非常に限られているのではないだろうか?

5.ITサービスマネジメントシステムの導入

自社のITサービスを定義するために、ITサービスマネジメントシステム(以下、“ITSMS”)の導入を推奨する。IT関連の国際認証では、情報セキュリティ管理システム(ISMS)に関するISO27000や品質管理システム(QMS)のISO9000が広く普及している。これに比べて、ITSMSに関するISO20000(以降、“ISO20K”)の認証を取得している企業は、日本においはまだ少数である。

しかし、今後ITSMSを導入することは益々重要になってくる。

たとえば、“サービス”を定義するためには、関係者間で必ずサービス契約書(SLA)、運用実施契約書(OLA)および請負委託契約書(UC)が必要である。これを履行するために必要な規定は、QMSやISMSでは十分にカバーできておらず、ITSMSの考えが必要になってくる。具体的には、ISO20Kにおける「顧客関係管理」や「供給者管理」プロセスの規定がこれに相当する。また、ISO20Kでは「継続的な改善」をプロセスとして規定しておりPDCAで実施すべきアクティビティを定義している。“サービス”とは継続的なものでありこの点も合致するのである。

そしてITSMSは、認証取得のための一過性の活動にとどめるのではなく、改善活動を継続することが重要である。これによって、「ITサービスの活用度、利用者の評価が上がり→IT部門の組織力を強くし→さらにサービスの品質や効率性を高め→企業リスクを低減し→より競争力のある企業にする。」という好循環が生まれるのである。

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
運用事業推進室 室長

渡辺 浩之
データセンターにおけるシステム運用の自動化、効率化のためのシステム化および
運用業務プロセスの設計、開発を担当。ITIL V2 Manager、V3 Expert有資格
(著者プロフィールは執筆時のものです)

お問い合わせ

株式会社 野村総合研究所
クラウドサービス本部
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