ネットワークは共用が前提 処理能力の拡張策を使い分け

クラウド時代の「運用の常識」(第9回)

仮想化技術を利用したプライベートクラウドでは、従来とは異なるネットワーク運用の課題がある。多くのサブシステムや仮想マシンがネットワークを共用することにより、トラフィックの大幅な増加が見込まれるからだ。LANとWANに分けて、設計や運用の考慮点を説明する。

 シンクライアントを使う際のWANの考慮点は、(1)回線容量、(2)可用性、(3)安定性、(4)接続の多様性、である。

(1)回線容量

 シンクライアントを使った場合、WANを流れるトラフィックは、画面データやキーボード/マウスの入力デ ータであり、増減が少なく負荷も大きくない。シンクライアントに必要な回線容量は、シンクライアント端末1台分のトラフィック量×利用端末数、ではじき出せる。

 ただし、ローカルプリンターで印刷する場合は注意が必要だ。デスクトップ環境がデータセンターにあるのに対し、プリンターは拠点側にあるので、WANを介したプリントデータの転送が発生する。このデータはバーストトラフィックとなる。

(2)可用性

 シンクライアントではネットワークに接続できないと拠点側で何もできないので、WANの可用性を高めることが重要になる。回線や機器を冗長化し、障害時は自動で切り替えることで、復旧時間を短縮できる。また、WANの機器や回線を監視し、迅速に障害復旧できるようにしておくことも大切だ。

(3)安定性

 シンクライアントでは、端末の操作のリアルタイム性、応答性が使い勝手に直結する。そのため、回線でのパケットロス率やネットワーク遅延が小さく、安定していることが重要となる。なるべくベストエフォート型ではなく、帯域確保や網内遅延に対するSLAが存在するギャランティー型の回線サービスを利用したい。

(4)接続の多様性

 シンクライアントでは、デスクトップ型やノートPC型のシンクライアント専用端末、普通のPCやタブレット端末、スマートフォンなど様々な端末が利用できる(図3)。拠点間のWAN回線だけでなく、モバイル回線やインターネットなど接続の多様性を実現することで、オフィスやモバイル環境、自宅など、どこにいても自分のPC環境が利用可能になる。こうした多様な接続形態を実現することで、テレワークを可能とし、柔軟な労働形態を実現するワークスタイル革新や、BCP(事業継続計画)にも寄与できる。

図3●シンクライアントシステムの利用例



(初出 日経コンピュータ 2011年04月14日号)

野村総合研究所 基盤サービス事業本部
クラウド推進部

田島 直樹
企業システムやASPサービスにおけるネットワーク(LAN/WAN)の設計や構築、維持管理を担当。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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