クラウドでIT部門に主導権 メインフレームの経験を生かす

クラウド時代の「運用の常識」(第4回)

プライベートクラウドの構築に当たっては、マルチテナントやチャージバックといった、様々な課題が突きつけられる。メインフレームで培ってきた「運用ノウハウ」を適用することで、これらの課題が解決可能だ。ノウハウをどう生かせばよいのか。そのコツを解説する。

チャージバックシステムに注目

 先に紹介したサービスの要ともいえるのが、チャージバックのシステムである。CPU利用時間やディスク使用量、I/O回数やネットワーク帯域など、利用するITリソースについて正確なチャージバックを行うシステムを導入し管理している。

 顧客それぞれとは、ITリソースごとに単価を設定し、利用状況に応じてチャージバックしている。チャージバックの仕組みが正しく機能することで、顧客はどの業務にどれだけコストがかかっているかを正確に把握できるようになる。

 顧客はコスト構造を押さえることで、事業を変更する際もサービス提供側へ要求をはっきりと伝えられる。例えば、二つの業務を統合する場合、単純に統合する手法ではデータが倍増する。データが倍増すればディスク使用量も倍増してしまう。そのとき、単純に統合してよいのか、それともデータ量を抑制すべきなのかを、早い時期から検討できる。また、金額に換算されているので、費用対効果からの評価も容易に行える。

 サービス提供側から顧客に対してコスト削減を提案しやすくなることも、チャージバック導入のメリットだ。「A業務のxx処理にコストがかかっているので、処理を改善しましょう」といった具合である。この場合、見込まれる改善効果を数値で示すことも可能だ。これらのメリットは、IT部門と事業部門との間でも同様だ。両者でシステムのITリソースに関する話を金額ベースでできることは、コミュニケーションを密にすることにもつながる。

 プライベートクラウド向けのチャージバックシステムのツールを各ベンダーが提供しているため、導入を検討したい。チャージバックシステムで重要なのは、提供するサービスの単価設計である。プライベートクラウドの運営に必要な総コストを把握したうえで、提供するサービスに関する適切な単価を設計することが大切だ(図3)

図3●コストと利用予測から適切に単価表を設計



 チャージバックシステムが有効に機能すれば、事業部門ごとにコストが可視化されるとともに、事業変化に応じた対策をIT部門から提案することが可能になる。IT部門側にもコスト意識が強く生まれるはずである。

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
サービスサポート事業部 主任

溝口 幸喜
2000年に野村総合研究所に入社し、
一貫してメインフレーム系システムの運用基盤設計、維持管理に従事。
CPU移行やOSバージョンアップなどのプロジェクトマネージャを担当。
専門は、メインフレーム基盤・ストレージ基盤の設計、維持管理。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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