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クラウドでIT部門に主導権 メインフレームの経験を生かす
クラウド時代の「運用の常識」(第4回)
プライベートクラウドの構築に当たっては、マルチテナントやチャージバックといった、様々な課題が突きつけられる。メインフレームで培ってきた「運用ノウハウ」を適用することで、これらの課題が解決可能だ。ノウハウをどう生かせばよいのか。そのコツを解説する。
マルチテナント運営技術を生かす
先の三つの懸念を払拭するにはどうしたらよいのか。野村総合研究所の運用事例を基に、解決方法を探っていこう。まずはIT部門の役割の変革だ。プライベートクラウドではIT部門がIT基盤の事業計画を策定しなければならない。
野村総合研究所のデータセンターでは、メインフレームの共同利用サービスを提供している。メインフレームを仮想化し、OS単位などで提供するものだ。複数の顧客システムの特性を把握し、メインフレームのITリソースを有効活用できるようなシステム構成を採っている。共同化することで、顧客は自社で調達するよりも低価格でシステム基盤を調達できる。
このサービスの運営は、メインフレームの運用管理や基盤維持管理を行っているIT部門が担当している。このメンバーは、サービスを利用しているすべての顧客と月次/四半期/年次でサービス報告やヒアリングを行う場を設け、顧客の事業状況や事業計画について情報収集している。このヒアリングで得た情報と、ITリソースの稼働状況の二つをインプットとして、ITリソースの利用計画や投資・コスト削減の施策を検討。このサービスにおける事業計画の策定と、それに基づく運用を行っている。サービスの事業計画に基づく運用をPDCAサイクルに沿って行うことで、顧客が満足できる運用品質の維持、向上を図っているのである(図2)。

このようにIT部門は、自らサービスの事業計画を策定するような組織になることで、事業に貢献するとともに、無駄のない高品質のシステムが提供できるようになる。
読者のなかには、「ウチのメインフレームも同じように運用している」と思った方もいるのではないだろうか。つまりメインフレーム運用では、事業部門とコミュニケーションを取り、限られたITリソースを有効活用するための方策を考え、システム設計や運用設計を行っていたのだ。これがまさにプライベートクラウドにおいても通用する「マルチテナ ント運営技術」のノウハウである。
こうしたノウハウを継承し、プライベートクラウド全体を管理する意欲のあるエンジニアをその管理者にアサインし、責任と権限を与えることが大切だ。そうすることで、IT部門のミッションや役割の増大に関する懸念は払拭されるはずである。
野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
サービスサポート事業部 主任
溝口 幸喜
2000年に野村総合研究所に入社し、
一貫してメインフレーム系システムの運用基盤設計、維持管理に従事。
CPU移行やOSバージョンアップなどのプロジェクトマネージャを担当。
専門は、メインフレーム基盤・ストレージ基盤の設計、維持管理。
(著者プロフィールは執筆時のものです)