クラウドでIT部門に主導権 メインフレームの経験を生かす

クラウド時代の「運用の常識」(第4回)

プライベートクラウドの構築に当たっては、マルチテナントやチャージバックといった、様々な課題が突きつけられる。メインフレームで培ってきた「運用ノウハウ」を適用することで、これらの課題が解決可能だ。ノウハウをどう生かせばよいのか。そのコツを解説する。

 メインフレーム衰退期といわれる今日ではあるが、メインフレームで培ってきた「運用ノウハウ」は、プライベートクラウド環境において活用可能だ。そのノウハウは大きく三つある。(1)マルチテナント(共同利用)環境の運営技術、(2)チャージバック(課金)システムの設計技術、(3)パートナーのマネジメント手法である。今回は、メインフレームのノウハウをどのように生かせるのか見ていこう。

プライベートクラウドの成否は運用に

 まず、メインフレームとプライベートクラウドのシステム基盤の特徴を押さえよう。

 メインフレームが主力の時代、高価なITリソースを企業内で有効活用する手法が編み出された。それが仮想化技術であり、これを駆使することにより各アプリケーションでITリソースを共有していた。メインフレームの特徴の一つが、ベンダーの手厚いサポートだ。開発からテスト、リリース、その後の安定運用まで面倒を見てくれる。メインフレームを利用しているユーザー企業は、安心の置けるベンダーと組むことで互いに良きパートナー関係を築いてきたはずである。

 最近の国内外の大手ITベンダーの動きを見ると、オープンなハードとソフトを垂直統合した製品開発を行ってきている。「オープンメインフレーム」とでも言うべき製品であり、最近になって各ベンダーが競うように提供を開始した(図1)。これは、従来のメインフレームと同様に、ハードからソフトまでを最適化したシステム基盤をベンダーが提供し、その上でユーザー側がアプリケーション開発するという構造である。ユーザーとしては、組み合わせ検証済みのシステム基盤が手に入ることになる。

図1●ハードとソフトを組み合わせた「オープンメインフレーム」の概要



 ところが、運用に関しては従来のメインフレームとオープンメインフレームでは様子が異なる。後者では、運用支援ツールは提供されているものの、どうすれば最適に運用できるかは、ユーザー側の力量に託されている。オープンメインフレームを使って構築したプライベートクラウドの成否は、運用にかかっていると言える。

野村総合研究所 システムマネジメント事業本部
サービスサポート事業部 主任

溝口 幸喜
2000年に野村総合研究所に入社し、
一貫してメインフレーム系システムの運用基盤設計、維持管理に従事。
CPU移行やOSバージョンアップなどのプロジェクトマネージャを担当。
専門は、メインフレーム基盤・ストレージ基盤の設計、維持管理。
(著者プロフィールは執筆時のものです)

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マルチクラウドインテグレーション事業本部
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